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ぼちぼち訪問看護~回想録~その⑦ 家族が病気になるということ

ぼちぼち訪問看護~回想録~その⑦ 家族が病気になるということ

こんにちは 看護部門・副管理者の大塚です。

~私が訪問看護の世界に飛び込んで、かれこれ20年。「昔もあって、今も変わらないもの」
「今までも、これからも大切にしたいもの」そんな日々の想いを、ぼちぼちお届けいたします~

私が訪問看護を始めて6~7年経った頃の話です。
その頃の私は、様々な利用者さんの対応をさせていただき、また訪問看護に必要な経験や技術も一通り習得し、新しい利用者さんのお宅にも行きますし、その時々の判断も、そう迷うことはありませんでした。
他のスタッフからヘルプがかかり、対応することもありました。
利用者さんのお話も聞き、ご家族にも助言のできる、自称、「一人前の訪問看護師」として毎日仕事に励んでいました。

ある日、兄に病気が見つかりました。
残された時間がそう長くはないとのことでした。

私は仕事を休んで、看護師としてではなく家族として兄のそばに付き添いました。
病院でしたので、家族として私が兄にしてやれることはそう多くなく、治療は医師にお任せし、ただただ心配しながら側で経過を見守り、「私が早く気付いていたら」「あの時○○していたら」と色々な後悔や心配がぐるぐる巡り、いつもいろいろな考えが浮かびます。

喉に何か詰まったような感じがして食事もあまり食べたくありません。
義姉と付き添いを交代して自宅に戻っても休めず、翌日心配しながら病室に向かい、兄の様子に一喜一憂し、何かあればナースを呼ぶ。
辛そうにしていればさすってやり、少しずつ弱っていく兄を見守る。
そんな時間が過ぎていきました。

結局、小学生の息子2人を残していかねばならない兄の本音を、私は聴いてやれずじまいでした。
私はそれまで訪問看護師として、ご家族の想いを理解しサポートしてきたつもりでしたが、「家族が病気になる。病気の家族がいる。そのご家族がどんな気持ちでいるか何もわかっていなかった。理解しわかったつもりで、結局はそんな自分に自己満足をしていただけだ。」
そう思った時、それまで積み上げていた自信や仕事に対する思い入れが、ばらばらと崩れていきました。
「もう、この仕事はできない」私はその時に、訪問看護をやめる決心をしました。

あれから10数年経ちました。訪問看護から少しだけ離れた時期はありましたが、皆さんご存知のように、私は今も訪問看護師をしております。
「自己満足ではない訪問看護」最初から仕切り直しでした。
生きているといろんなことがありますが、人生経験は良いことも・悪いことも含め、仕事に幅と深みを与えると思います。
これからも、めげないでやっていきたいと思います。